日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版

造血器腫瘍診療ガイドライン

第3版 序文

 「根拠(エビデンス)に基づく医療」(evidence-based medicine:EBM)という言葉は,1991年にカナダのガヤットという研究者によって最初に提唱され,それ以降,急速に世界中に広がっていった。そして,日常診療においてEBMを実践する際の拠り所のひとつとなるのが診療ガイドラインである。
 日本血液学会では2013年に造血器腫瘍治療ガイドラインの初版を出版し,本書は国内における造血器腫瘍疾患の診療の場において広く活用されるようになった。一般に,診療ガイドラインの有効期限は5年程度と考えられており,5年以内に改訂することが推奨されている。しかし,近年の造血器腫瘍に対する治療薬・治療法の進歩は目覚ましい。それに対応するため,本ガイドラインも書籍あるいはWeb上で改訂を続け,今回,第3版を発刊することとなった。
 前版である2020年5月25日発刊の第2版補訂版以降も,多発性骨髄腫に対する新たなCAR-T細胞療法,新規分子標的薬の承認,既存の分子標的薬の適応拡大などがあり,疾患によっては,前版とは治療アルゴリズム,CQの内容,解説も大きく異なっている。
 今回の改訂では,ガイドライン担当理事である千葉 滋先生,造血器腫瘍診療ガイドライン委員長である尾崎修治先生の統括のもと,「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に準じて,エビデンス抽出の客観性の担保を目的にシステマティックレビューの実施などのプロセスが新たに取り入れられた。これらによって,従来よりもさらに質の高いガイドラインになったと自負している。
 本ガイドラインの改訂には,これら2人の先生以外にも,委員会の多くの先生方にご尽力いただき,各専門分野の一線で活躍されている先生方に執筆をお願いした。評価委員の先生方には,作成委員会から独立した立場で評価をしていただいた。また,多数の先生方からパブリックコメントをいただいた。これら本ガイドラインの作成に関わってくださった,すべての先生方にこの場を借りて,お礼を申し上げたい。
 現在のEBMでは,患者さんにエビデンスを単に当てはめるだけでなく,「最善の根拠」,「医療者の経験」,「患者の価値観」を統合して,患者さんにとってより良い質の高く,かつ患者さんを考慮した医療を行うことが求められている。皆様が個々の患者さんを診療するにあたって,本ガイドラインが「最善の根拠」のひとつとして,日常診療の一助となれば幸いである。

 2023年6月

日本血液学会理事長 松村 到

第2版補訂版 序文

 本ガイドラインは初版より,冊子としての発行に加え,日本血液学会ホームページにおいてもWeb版として公開されている。Web版ガイドラインでは,冊子刊行後の進歩を迅速に取り入れ,臨床現場での一層の活用を促進するために適宜改訂が加えられている。一方,冊子版ガイドラインにおいては,2018年版(第2版)が刊行されてから約2年が経過し,重要な新薬の登場によって,疾患の治療アルゴリズムやクリニカルクエスチョン(CQ)の内容を変更する必要が生じてきた。そこでこの度,Web版の改訂に合わせて冊子として補訂版を刊行する運びとなった。
 具体的には,世界で初めて承認された二重特異性抗体であるブリナツモマブ,CAR-T細胞療法であるチサゲンレクルユーセル,また,新たな分子標的治療薬としてベネトクラクス,オビヌツズマブなどが重要な追加項目である。
 なお,2018年版刊行後に作成委員会が再編成されたことから,委員一覧および利益相反開示については第2版と補訂版を併記することとした。
 本補訂版では,すべてのCQに対して改訂の必要性を吟味し,重要なエビデンスや新薬の保険収載や適用の変更を取り込むようにした。それらの記載は,作成委員会から独立した評価委員の審査を受け,その結果を反映して最終稿が作成された。小改訂ではあるが,最新の診療を行うのに必要な事項がアップデートされている。本ガイドラインが皆様の日常診療の一助となれば幸いである。

 2020年4月

日本血液学会理事長 赤司浩一

第2版 序文

 医学は,患者の症状や理学的所見からその病気を分類し,それぞれの疾病に対して「疾患(病名)別」に治療法を開発する,という方法論のもとに進化してきた。しかし複雑な病態に対する様々な治療理論が明らかになるにつれ,アナログ思考の中から優れた選択を行う昔ながらの「名医」の定義は曖昧となり,多施設共同研究などの大規模臨床研究によって得られる科学的根拠に基づいた医療,すなわちEBM(Evidence-Based Medicine)を行うことが医師の必要条件となった。さらに最近では,網羅的生命分子解析技術の飛躍的な発展により,個人の疾病に即した「精密医療(Precision Medicine)」の実現に向けて研究が進んでいる。
 造血器悪性腫瘍に対する治療法は,従来の標準的化学療法に加え,造血幹細胞移植術,分子標的療法,抗腫瘍免疫療法などの各分野で毎年新たな知見が得られ,様々な新薬が国内外で開発され続けている。しかし,医師個人が日常診療の中でこれらの膨大な最新知識を入手し,そのエビデンスレベルに基づき診療することは容易ではない。また我が国において,いわゆるドラッグラグは国も含めた医療関係者の努力によりほぼ解消しつつあるが,国民皆保険の元では海外で報告される最新の治療をそのまま実行できない,という問題は依然として存在する。
 日本血液学会では,その時点で明らかになっている内外のエビデンスを整理し,我が国の医療の現場で適切に診断や治療を行うための伴侶として,2013年に「造血器腫瘍診療ガイドライン第1版」を作成した。本分野におけるその後の長足の進歩を踏まえ,今回5年振りに全面改訂して第2版をお届けする。内容に関しては,第1版と同様にガイドライン案の作成後,独立した評価委員会による評価を行い,さらに日本血液学会会員に限らず広くパブリックコメントを募り,取り入れた。我が国の造血器腫瘍の特徴や医療の実情に基づき,適切に選択されたクリニカルクエスチョン(CQ)により,実地診療に有益な情報がよどみなく頭に入る構成である。
 本ガイドライン第2版は,ガイドライン作成委員会委員長の中尾眞二先生を中心として,数多くの学会員の努力により日の目を見ることができた。この場を借りて関係者の皆様に心から深謝したい。今後も時代に即したガイドラインを提供するため,定期的に改訂していく予定である。日本血液学会会員諸氏の継続的なご支援とご助力を心よりお願いする。

 2018年6月

日本血液学会理事長 赤司浩一

初版 序文

 白血病,リンパ腫,骨髄腫などの造血器腫瘍は,病態が分子・遺伝子レベルで次々と明らかになり,診断法や治療法が急速に進歩している分野である。従来の標準的化学療法に加え,分子標的療法,造血幹細胞移植,抗腫瘍免疫療法,補助療法において毎年新たな報告がなされ,治療の選択肢が広がっている。EBM(evidence-based medicine)に重要な科学的根拠は年々増加しているが,日常の業務に多忙の臨床医が,造血器腫瘍領域における膨大な最新知識を常に入手し,そのエビデンス(科学的根拠)のレベル(質)を正確に判断するのは容易なことではない。また,造血器腫瘍の中には,頻度の低い疾患や,多数例解析によるエビデンスレベルが高い成績が存在しない場合も経験する。これらの理由から,現時点で明らかになっているエビデンスを整理し,医療の現場で適切に診断や治療が行えるように補助する診療ガイドラインの必要性が増してきている。
 日本血液学会では,学会内外ならびに日本癌治療学会からの要望に応え,本学会が主体となり白血病,リンパ腫,骨髄腫の3領域に関する造血器腫瘍診療ガイドラインを作成することが2010年12月の理事会で承認された。学会の診療・学術・教育の3委員会が中心となって造血器腫瘍診療ガイドラインの作成・評価を行うことになり,黒川峰夫先生に作成委員会委員長,大西一功先生には疾患別作成委員会委員長を依頼した。2011年より白血病,リンパ腫,骨髄腫の細かな病型別に数名の専門家からなる作成委員会が設けられ,ガイドラインの作成が開始された。ガイドライン案の作成後,独立した評価委員会による評価を行い,日本血液学会会員によるパブリックコメントも得て,出版の運びとなった。
 本ガイドラインは,造血器腫瘍の各病型について,総論,アルゴリズム,Clinical question(CQ)の構成となっている。我が国の造血器腫瘍の特徴や医療の実情も加味した独自の診療ガイドラインであり,診断・治療・予後予測などの実地診療に有益な情報が簡潔に提供されている。なお,本ガイドラインは,現時点における標準的な診療情報の提供であり,個々の症例における診断・治療の決定・責任は医師と患者にあることを改めてご認識いただいた上で,ご活用いただければ幸いである。
 今後も時代に即したより良い造血器腫瘍診療ガイドラインを提供するため,定期的に改訂する予定である。日本血液学会会員諸氏の継続的なご支援とご助力をお願いしたい。最後に,誠にご多忙な折に本造血器腫瘍ガイドラインの作成・評価をお引き受け頂いた先生方にこの場を借りて深謝する次第である。

 2013年10月

日本血液学会理事長 金倉 譲

造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会

(五十音順)

作成委員会
企画委員
委員長 尾崎 修治 徳島県立中央病院血液内科
副委員長 南谷 泰仁 東京大学医科学研究所造血病態制御学分野
委員(事務局) 名島 悠峰 がん・感染症センター都立駒込病院血液内科
委員 飯田 真介 名古屋市立大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学分野
康  勝好 埼玉県立小児医療センター血液腫瘍科
堺田惠美子 千葉大学医学部附属病院血液内科
鈴木 隆浩 北里大学医学部血液内科学
永井 宏和 名古屋医療センター血液内科
藤田 浩之 済生会横浜市南部病院血液内科
松村  到 近畿大学医学部血液・膠原病内科
宮﨑 泰司 長崎大学原爆後障害医療研究所 原爆・ヒバクシャ医療部門 血液内科学研究分野
ガイドライン担当理事 千葉  滋 筑波大学医学医療系血液内科

*日本血液学会造血器腫瘍診療ガイドライン委員会委員

執筆委員
白血病 領域委員長 清井  仁 名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科
AML 前田 嘉信** 岡山大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
宮本 敏浩 金沢大学医薬保健研究域医学系血液内科学
山内 高弘 福井大学医学部血液・腫瘍内科
山口 博樹 日本医科大学血液内科
横山 寿行 東北大学病院血液内科
APL 藤田 浩之** 済生会横浜市南部病院血液内科
石川 裕一 名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科
横山 泰久 筑波大学医学医療系血液内科
ALL/LBL 八田 善弘** 日本大学医学部血液膠原病内科
伊豆津宏二 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
鬼塚 真仁 東海大学医学部血液腫瘍内科
土橋 史明 東京慈恵会医科大学附属第三病院腫瘍・血液内科
早川 文彦 名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻細胞遺伝子情報科学
山崎 悦子 横浜労災病院血液内科
CML/MPN 下田 和哉** 宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野
入山 規良 埼玉病院血液・膠原病内科
川口 辰哉 熊本保健科学大学保健科学部医学検査学科
木村 晋也 佐賀大学医学部血液・呼吸器・腫瘍内科
桐戸 敬太 山梨大学医学部血液・腫瘍内科
髙橋 直人** 秋田大学医学部血液・腎臓・膠原病内科学講座
竹中 克斗 愛媛大学大学院医学系研究科血液・免疫・感染症内科学
CLL/SLL 髙松  泰** 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学
小島 研介 高知大学医学部血液内科学講座
MDS 宮﨑 泰司** 長崎大学原爆後障害医療研究所 原爆・ヒバクシャ医療部門 血液内科学研究分野
石山  謙 国立国際医療研究センター病院血液内科
市川  幹 NTT東日本関東病院血液内科
臼杵 憲祐 NTT東日本関東病院血液内科
鈴木 隆浩 北里大学医学部血液内科学
リンパ腫 領域委員長 永井 宏 和名古屋医療センター血液内科
FL 伊豆津宏二** 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
福原 規子 東北大学病院血液内科
MZL, LPL/WM 吉田  功** 四国がんセンター血液腫瘍内科
亀岡 吉弘 秋田大学医学部血液・腎臓・膠原病内科学講座
関口 直宏 災害医療センター血液内科
MCL 石澤 賢一** 東北福祉大学健康科学部保健看護学科
山本 一仁 愛知県がんセンター
DLBCL 大間知 謙** 東海大学医学部血液・腫瘍内科学
島田 和之 名古屋大学医学部附属病院血液内科
宮﨑 香奈 三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学
BL 錦織 桃子** 京都大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学
近藤 英生 川崎医科大学血液内科学
ENKL,PTCL 丸山  大** がん研究会有明病院血液腫瘍科
吉満  誠 鹿児島大学病院血液・膠原病内科
ATL 野坂 生郷** 熊本大学病院がんセンター外来化学療法センター
福島 卓也 琉球大学医学部保健学科血液免疫検査学分野
HL 楠本  茂** 愛知県がんセンター血液・細胞療法部輸血部
冨田 章裕 藤田医科大学医学部血液内科学
骨髄腫 領域委員長 尾崎 修治 徳島県立中央病院血液内科
MM,孤立性形質細胞腫 飯田 真介** 名古屋市立大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学分野
伊藤 薫樹 岩手医科大学血液腫瘍内科
角南 一貴 岡山医療センター血液内科
高松 博幸 金沢大学附属病院血液内科/融合研究域融合科学系
塚田 信弘 日本赤十字社医療センター血液内科
保仙 直毅 大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学
三木 浩和 徳島大学病院輸血・細胞治療部
ALアミロイドーシス 淵田 真一** 京都鞍馬口医療センター血液内科
POEMS症候群 堺田惠美子** 千葉大学医学部附属病院血液内科

**各疾患の責任者

システマティックレビュー(SR)チーム
白血病 AML 淺田  騰 岡山大学病院血液・腫瘍内科
安東 恒史 長崎大学原爆後障害医療研究所 原爆・ヒバクシャ医療部門 血液内科学研究分野
小野澤真弘 北海道大学病院臨床研修センター
小野寺晃一 東北大学病院血液内科
遠矢  嵩 がん・感染症センター都立駒込病院血液内科
細野奈穂子 福井大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
山内 拓司 九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科
脇田 知志 日本医科大学血液内科
APL 小林 宣彦 群馬大学大学院医学系研究科血液内科学
木口  亨 獨協医科大学埼玉医療センター糖尿病内分泌・血液内科
坂本 竜弘 筑波大学医学医療系血液内科
松本 憲二 横浜市立大学附属病院血液・リウマチ・感染症内科
南口 仁志 滋賀医科大学医学部附属病院輸血・細胞治療部
柳田 正光 愛知県がんセンター血液・細胞療法部
ALL/LBL 石井 敬人 東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科
伊豆津宏二 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
牛島 洋子 名古屋大学医学部附属病院血液内科
内野 慶人 災害医療センター血液内科
清水 啓明 がん・感染症センター都立駒込病院血液内科
立花 崇孝 神奈川県立がんセンター血液内科
原田 介斗 東海大学医学部血液・腫瘍内科学
宮崎 拓也 横浜市立大学附属市民総合医療センター血液内科
山本 久史 虎の門病院血液内科
CML/MPN 嬉野 博志 広島大学原爆放射線医科学研究所血液内科
枝廣 陽子 順天堂大学大学院医学研究科血液内科学
小野 孝明 浜松医科大学輸血・細胞治療部
片桐誠一朗 東京医科大学血液内科学分野
近藤  健 愛育病院血液内科・血液病センター
幣 光太郎 宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野
杉本 由香 三重大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学
髙久 智生 順天堂大学大学院医学研究科血液内科学
南  陽介 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科
CLL/SLL 磯部 泰司 福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学
遠西 大輔 岡山大学病院ゲノム医療総合推進センター
太田 秀一 札幌北楡病院血液内科
瀧澤  淳 新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野
MDS 荒井 俊也 東京警察病院血液内科
糸永 英弘 長崎大学病院細胞療法部
篠原 明仁 東京女子医科大学血液内科
白鳥 聡一 北海道大学病院血液内科
杉田 純一 札幌北楡病院血液内科
中崎 久美 国際医療福祉大学三田病院悪性リンパ腫・血液腫瘍センター
名島 悠峰 がん・感染症センター都立駒込病院血液内科
前田 智也 埼玉医科大学国際医療センター造血器腫瘍科
森田 泰慶 近畿大学医学部血液・膠原病内科
リンパ腫 FL 古林  勉 京都第一赤十字病院血液内科
髙橋 宏通 日本大学医学部附属板橋病院血液膠原病内科
八田 俊介 仙台医療センター血液内科
山本  豪 虎の門病院血液内科
MZL,LPL/WM 今泉 芳孝 長崎医療センター血液内科
勝屋 弘雄 佐賀大学医学部血液・呼吸器・腫瘍内科
小林 宏紀 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科血液・腫瘍・呼吸器内科学
斉藤 明生 渋川医療センター血液内科
田村 志宣 和歌山県立医科大学血液内科
松田 健佑 東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科
MCL 市川  聡 東北大学病院血液内科
千原  大 Department of Lymphoma and Myeloma,MD Anderson Cancer Center
棟方  理 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
DLBCL 入山智沙子 藤田医科大学医学部血液内科学
鎌田 浩稔 北里大学医学部血液内科学
髙橋 寛行 神奈川県立がんセンター血液・腫瘍内科
中村 信彦 岐阜大学医学部附属病院血液・感染症内科
吉田 晶代 金沢大学附属病院血液内科
BL 岩城 憲子 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
城  友泰 京都大学医学部附属病院検査部・細胞療法センター
藤本 亜弓 がん研究会がん研究所分子標的病理プロジェクト
ENKL,PTCL 七條 敬文 熊本大学病院血液・膠原病・感染症内科
豊田 康祐 熊本大学病院血液・膠原病・感染症内科
牧山 純也 佐世保市総合医療センター血液内科
山内 寛彦 がん研究会有明病院血液腫瘍科
ATL 今泉 芳孝 長崎医療センター血液内科
勝屋 弘雄 佐賀大学医学部血液・呼吸器・腫瘍内科
立津  央 熊本大学病院血液・膠原病・感染症内科
中村 大輔 鹿児島大学病院血液・膠原病内科
HL 上田 格弘 小牧市民病院血液内科
齊藤 繁紀 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院血液・腫瘍内科
平賀 潤二 豊田厚生病院血液内科
蒔田 真一 国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科
骨髄腫 MM,孤立性形質細胞腫 池田  翔 秋田大学医学部血液・腎臓・膠原病内科学講座
板垣 充弘 広島赤十字・原爆病院血液内科
一井 倫子 大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科
河野  和 熊本大学病院血液・膠原病・感染症内科
菊池  拓 日本赤十字社医療センター血液内科
黒田 芳明 広島西医療センター血液内科
白崎 良輔 帝京大学医学部附属病院内科学講座血液腫瘍研究室
鈴木 一史 東京慈恵会医科大学附属病院腫瘍・血液内科
田中 宏和 近畿大学医学部血液・膠原病内科
築根  豊 順天堂大学大学院医学研究科血液内科学
永田 泰之 浜松医科大学血液内科
成田健太郎 亀田総合病院血液・腫瘍内科
成田 朋子 名古屋市立大学病院血液・腫瘍内科学
西村 倫子 Memorial Sloan Kettering Cancer Center BMT service
水野 昌平 愛知医科大学内科学講座(血液内科)
吉原  哲 兵庫医科大学呼吸器・血液内科学
ALアミロイドーシス 片山 雄太 広島赤十字・原爆病院血液内科
志村 勇司 京都府立医科大学附属病院輸血・細胞医療部
POEMS症候群 三村 尚也 千葉大学医学部附属病院輸血・細胞療法部
原田 武志 徳島大学大学院医歯薬学研究部血液・内分泌代謝内科学分野

造血器腫瘍診療ガイドライン評価委員会

評価委員会
評価委員長 張替 秀郎 東北大学病院血液内科
白血病 領域委員長 中島 秀明 横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科学
  後藤 明彦 東京医科大学血液内科学分野
  門脇 則光 香川大学医学部血液・免疫・呼吸器内科学
  齋藤  健 東京慈恵会医科大学附属病院腫瘍・血液内科
リンパ腫 領域委員長 石塚 賢治 鹿児島大学病院血液・膠原病内科
  安藤  潔 東海大学医学部血液・腫瘍内科学
  鈴木 律朗 島根大学医学部血液・腫瘍内科
  山口 素子 三重大学大学院医学系研究科先進血液腫瘍学
骨髄腫 領域委員長 中世古知昭 国際医療福祉大学成田病院血液内科
  坂井  晃 福島県立医科大学医学部放射線生命科学講座
  照井 康仁 埼玉医科大学病院血液内科
  服部  豊 慶應義塾大学薬学部病態生理学講座
移植   内田 直之 虎の門病院血液内科
放射線領域   江島 泰生 獨協医科大学放射線医学講座
  鹿間 直人 順天堂大学医学部放射線科
  田口 千藏 がん研究会有明病院放射線治療部
  長谷川正俊 奈良県立医科大学放射線腫瘍医

*日本血液学会造血器腫瘍診療ガイドライン委員会委員

はじめに

1.目的と対象

 本ガイドライン作成の目的は,エビデンスに基づいてわが国における造血器腫瘍の日常診療のなかで最適と考えられる推奨を提示し,医療利用者(患者など)と提供者(医師など)の意思決定を支援することである1)。ただし,記載内容は医療提供者を対象としている。また,エビデンスを重視しつつ,わが国の保険診療システムのなかで医療が行われることを前提に記述されている。
 造血器腫瘍診療ガイドライン初版が2013年に刊行・公開された時点ですでに治療薬開発が進展しており,新規治療薬が次々と市場に投入されていたが,その流れはいっそう加速している。その結果,新規治療薬同士の相互比較が臨床試験によって必ずしも示されない状況も珍しくなくなっている。こうした状況のなかで,2018年の第2版を経て,今回第3版の作成に至った。
 診療ガイドラインが依拠する基盤は,特定の対象・条件下で行われた臨床試験である。可能な限り複数の試験の成績から抽出したエビデンスを総合的に評価して推奨が示されているが,それを日常診療のなかでそのまま外挿あるいは敷衍することが正しいと保証するものではない。臨床現場における意思決定には,臨床研究によるエビデンスとともに医療の現状と環境,患者の価値観の三者が密接に関連している。これらの情報や状況を統合する役割を果たすのが,専門職である医療提供者である。この意味で,診療ガイドラインは医師の裁量に影響を与えるが,それを拘束するものではない1)。したがって,本ガイドラインの遵守の有無のみによって医療担当者が法的責任を問われることはない。また,本ガイドラインは法的責任の根拠となることを意図して作成されるものではない2)

2.作成の経緯

 1990年代はじめにEBMの概念が提唱されて広がり3),わが国では厚生省(当時)がEBM普及を目的に研究助成を開始して1999年以降ガイドライン作成の動きが広まった4)。がんについては2001年以降順次作成が始まり,造血器腫瘍診療ガイドラインは2011年に日本血液学会に造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会が設置されたことを端緒とする。2013年に初版が刊行・WEB公開され,その小改訂版が2014年(第1.1版)および2015年(第1.2版)にWEB版として公開された。その後,大改訂が行われて2018年に第2版が刊行・WEB公開され,2020年には第2版補訂版の刊行・WEB公開された。
 その直後から,日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドライン作成委員会において第3版の作成準備が開始された。そして次項に述べるプロセスを経て2023年7月に刊行され,2024年1月にWEB公開される運びである。

3.作成方法

1)執筆委員の任命とガイドラインの構成
 造血器腫瘍には多数の疾患が含まれる。本ガイドラインでは初版からこれらの疾患を白血病領域,リンパ腫領域,骨髄腫領域に大分類し,また各領域の執筆を統括する領域委員長が任命されており,本版でも踏襲されている。白血病領域は6つの,リンパ腫領域は8つの疾患ジャンルに,また骨髄腫領域は,多発性骨髄腫・孤立性形質細胞腫とその他2つの類縁疾患の3つに分けられている。
 白血病領域とリンパ腫領域では,独立した複数疾患が1つの疾患ジャンルに含まれたり,同一病名の疾患内における異質性が高いといった特徴がある。そこで疾患ジャンルごとに複数(白血病領域では2~8名,リンパ腫領域では2~3名)の執筆委員が任命された。領域委員長を含め,白血病領域6疾患ジャンルで計29名,リンパ腫領域8疾患ジャンルで計19名である。これに対し,骨髄腫領域では圧倒的に多発性骨髄腫のクリニカル・クエスチョン(CQ)が多いため,多発性骨髄腫の治療や評価が6つのセクションに分けられ,この他に孤立性形質細胞腫,およびその他2つの類縁疾患を加えて,領域委員長を含めて10名の執筆委員が担当した。全領域合わせて執筆委員は合計58名である。

2)システマティック・レビュー(SR)委員の任命
 これまでは執筆委員が文献検索と執筆の両方を行ってきたが,今版ではMindsによるガイドライン作成方針1)をできるだけ踏襲し,また可能な限り客観的な方法で作成するため,初めてSR委員が任命された。SR委員は白血病領域45名,リンパ腫領域31名,骨髄腫領域20名,合計96名である。

3)CQの選定
 疾患ジャンルまたはセクションそれぞれの執筆委員の合議でCQ案を作成し,領域ごとに任命された評価委員によって評価を受けた後,修正を加えてCQが選定された。選定されたCQは,白血病領域で77,リンパ腫領域で69,骨髄腫領域で33,合計179である。CQは領域・セクションを問わず,個々のCQを読むことで独立にそのCQがどの患者を対象とするものかをわかるように記述されている。

4)文献検索と構造化抄録の作成
 各CQにおけるキーワードをもとにSR委員が一次資料の網羅的な文献検索を行うと同時に,ハンドサーチによる検索を行った。検索データベースにはPudMedが用いられた。また,エビデンスレベルの高い重要な学会抄録も検索対象に含められている。
 次に,検索結果はCQごとに構造化抄録にまとめられている。この際に用いた検索式は可能な限り記載するが,必須としない方針とされた。

5)執筆
 領域ごとに,以下の方針で総論が執筆された。白血病領域では疾患ジャンルごとの総論が記述されている。リンパ腫領域ではリンパ腫全体の総論,および疾患ジャンルごとの総論が記述されている。骨髄腫領域では,多発性骨髄腫・孤立性形質細胞腫,およびその他2つの類縁疾患の3疾患(ジャンル)それぞれについて総論が記述されている。
 CQごとの解説は,執筆委員が構造化抄録に依拠して作成した。ただし,執筆委員とSR委員との議論は妨げない方針とされた。その結果,執筆委員からSR委員への再度の文献検索依頼や,メールを介した議論などが行われた。文献は検索されたなかから解説作成において重要なものを選定して掲載した。また,エビデンスレベルが高いにもかかわらずわが国では未承認の薬剤または適用外の薬剤を含む治療法については,保険診療では使用できない旨を明記した上で記載されている(本文中では未承認の薬剤は英字表記とされている)。
 なお,造血器腫瘍の分類は2017年に改訂されたWHO分類(revised version 4)5)に依拠して行われてきた。一方,本版作成中にWHO分類(2017)の主要執筆メンバーがWHOから独立してInternational Consensus Committee(ICC)分類を発表し6,7),ほぼ同時にWHOも新たな造血器腫瘍分類(version 5)の概要を発表した8,9)。このような状況下で,本版作成の基本姿勢としてはWHO分類(2017)に準拠することとした。ただし,特に白血病領域のうち急性骨髄性白血病(AML)では,しばしばEuropean LeukemiaNet(ELN)が提案しているリスク分類を参考に解説している。その一方で,ELNは2022年の改訂でICC分類を採用して記述している10)。このため,AMLの総論でELNの新たなリスク分類を紹介しつつ,ICC分類にも触れている。

6)評価とパブリックコメント
 執筆委員が作成した第1稿について評価委員会が評価し,執筆委員は第2稿を作成した。第2稿についてパブリックコメントを求め,評価委員会からの新たな指摘も踏まえて執筆委員は第3稿を作成した。第3稿について,日本血液学会理事会において最終稿として承認された。
 評価委員会は,評価委員長1名と3つの領域それぞれに4名の計13名が日本血液学会から推薦され,これに日本造血・免疫細胞療法学会から推薦された1名,および日本放射線腫瘍学会から推薦された4名の合計18名で構成された。

7)エビデンスレベル
 文献のエビデンスレベルについては,各研究機関より種々のものが提案されている。本ガイドラインでは,このうち米国National Cancer Institute(NCI)のComprehensive Cancer DatabaseのPhysician Data Query(PDQ)における表示法を参考にしている。すなわち試験結果を「研究デザインの強さ」および「エンドポイントの強さ」の2つのスケールに基づいて順位づけして表示している(表1)。エビデンスレベルは各CQの参考文献の末尾に記載した。

8)推奨グレード
 推奨グレードの表示形式についても種々のものが提案されている。推奨案は,エビデンスのレベルとエビデンスの数と結論のばらつき,臨床的有効性の大きさ,臨床上の適用性,有害性や費用に関するエビデンスの各要素を勘案して総合的に判断される。また,複数の信頼し得るエビデンスがあるが,利益と害が拮抗している場合,あるいは明確なエビデンスがないか質が低い場合は明確な推奨が困難となる。こうした場合は,エキスパート・オピニオンを参考にしたエビデンスと臨床医の経験を客観的に調和させるコンセンサスという形を取らざるを得ない。造血器腫瘍の臨床試験においてはランダム化比較試験の成績が得られている場合は必ずしも多くはなく,第Ⅱ相試験の成績に基づいて判断せざるを得ない場合も多い。本ガイドラインではNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)Clinical Practice Guideline in Oncologyによるエビデンスとコンセンサスによるカテゴリーを参考にして推奨グレードが作成されている。NCCNのグレードはカテゴリー3までであるが,CQのうち強く否定される課題についてはカテゴリー4を設け,否定が明確に示されるようになっている(表2)。また,本ガイドラインでは費用対効果に関する判断は含んでいない。

表1 エビデンスレベル
エビデンスレベルは,「研究デザインの質」および「研究エンドポイントの質」の2つのスケールで評価するNCI-PDQによる尺度を用いた。

研究デザインの質
1.ランダム化比較試験
ⅰ.ダブルブラインド
ⅱ.ブラインドなし
2.ランダム化されていない前方視的比較試験
3.症例集積研究
ⅰ.ポピュレーションベースの継続的症例集団
ⅱ.ポピュレーションベースではない継続的症例集団
ⅲ.継続的ではない症例集団

研究エンドポイントの質
A.全生存
B.原因特異的生存
C.質の高いQOL研究
D.間接的なエンドポイント
ⅰ.無イベント生存割合または期間(event-free survival:EFS)
ⅱ.無病生存割合または期間(disease-free survival:DFS)
ⅲ.無増悪生存割合または期間(progression-free survival:PFS)
ⅳ.治療反応割合など(tumor response rate)

注)2011にNCI(National Cancer Institute)におけるPDQ(Physician Data Query)で用いられていたエビデンスレベル[Levels of Evidence for Adult and Pediatric Cancer Treatment Studies(PDQ)]を参考にした。

 個々の研究のエビデンスレベルを検討するために,「研究デザインの質」および「研究エンドポイントの質」の2つのスケールで評価し,個々の研究の総合的なエビデンスレベルの概要を把握する。2つのスケールにより,例えば以下のように研究のエビデンスレベルを表現できる。
 1iiA  :Phase Ⅲ RCT(盲検なし)で,OSがエンドポイント
 3iiiDiv:Phase Ⅱ single arm trialで,治療反応率がエンドポイント。ただし,以下のような事項は2つのスケールの評価対象に含まれていない。
・前方視的研究か,後方視的研究か
・観察研究か,介入を規定して実施する臨床試験か
・治療毒性の評価
・観察された点推定値(OSなど)の信頼区間の幅
・臨床研究(臨床試験)の規模
・臨床試験におけるデータ管理などの質管理程度
・研究に必要とされた費用
研究デザインの質
1.ランダム化比較試験
ⅰ.ダブルブラインド
ⅱ.ブラインドなし
注)
・ⅰは,ランダム化前後および介入治療経過中においても,医師にもブラインドされていることが必要である。
・RCTのメタアナリシスの場合もこの項(1.)に入る。メタアナリシスをより上位のレベルとする規準もあるが,NCI-PDQでは,小規模RCTのメタアナリシスが大規模RCTの結果と一致しないことがしばしばあることや,研究者によって同じclinical questionを検討するメタアナリシスの別の研究結果が異なることもあり,RCTと同じ項(1.)に含められている。
・RCTの主要評価項目ではないサブセット解析に関しては,次の項(2.)に入るが,研究計画時に明確な仮説およびパワー・症例数設定がされていた場合は(1.)に含める場合もある
・Phase Ⅲ RCTは基本的にこの項に入ると考えられる。
・Randomized phase Ⅱ trialは通常はこの項には含まれない(標準治療群がコントロール群として設定されていた場合にはこの項に含まれる場合がある)。
サブセット解析や副次的評価項目の解析結果を引用した場合は,主要評価項目に関するエビデンスレベルの後に,その解析の評価項目に関するエビデンスレベルを下線を付して併記した(例:1iiA/2Div)。

2.ランダム化されていない前方視的比較試験
注)
・比較試験だが,ランダム化されていない場合もこの項(2.)に含める。
・Historical controlとの比較は,この項に含めない。

3.症例集積研究
ⅰ.ポピュレーションベースの継続的症例集団
ⅱ.ポピュレーションベースではない継続的症例集団
ⅲ.継続的ではない症例集団
注)
・稀な疾患や,治療内容によっては,可能である研究デザインの質レベルが3となる場合もあるので,必ずしもこれのみで研究の意義を評価するものではない。
・選択バイアスの可能性や,研究対象が母集団を代表しているかという点を重視し,外的妥当性がより高いと考えられる研究対象であるかどうかにより,3の内部でⅰからⅲに分かれている。
・PhaseⅠdose finding studyや,単群のphase Ⅱ trialは,患者選択規準・除外規準を用いて選択された集団における研究であるため,本レベルでは3iiiに分類される。
・Randomized phase Ⅱ trialは一般的には新規治療どうしを選択デザインあるいはスクリーニングデザインなどで比較する研究であるが,これも3iiiに含む。
研究エンドポイントの質
A.全生存
B.原因特異的生存
C.質の高いQOL研究
D.間接的なエンドポイント
ⅰ.無イベント生存割合または期間(event-free survival:EFS)
ⅱ.無病生存割合または期間(disease-free survival:DFS)
ⅲ.無増悪生存割合または期間(progression-free survival:PFS)
ⅳ.治療反応割合など(tumor response rate)
注)
長期生存の評価が最もレベルが高く,評価者の評価により個々の症例のエンドポイントが変わりうるもの(よりsubjectiveなもの)かどうか,という点が重視されている。しかし,がんの治療薬あるいは治療方法の開発により,生存期間が延長し,より間接的なエンドポイント(代替エンドポイント)を研究のエンドポイントとして用いざるを得ないものも存在する。

表2 推奨グレード
日血ガイドライン委員会の推奨グレード

カテゴリー1 高レベルのエビデンス(例:ランダム化比較試験)に基づく推奨で,統一したコンセンサスが存在する。
カテゴリー2A 比較的低レベルのエビデンスに基づく推奨で,統一したコンセンサスが存在する。
カテゴリー2B 比較的低レベルのエビデンスに基づく推奨で,統一したコンセンサスは存在しない(ただし大きな意見の不一致もない)。
カテゴリー3 いずれかのレベルのエビデンスに基づく推奨ではあるが,大きな意見の不一致がある。
カテゴリー4** 無効性あるいは害を示すエビデンスがあり,行わないよう勧められるコンセンサスが存在する。

NCCNの「エビデンスとコンセンサスによるカテゴリー」に基づきNCCN Guidelinesの許諾を得て改変した。
**否定的推奨については,統一したコンセンサスがある場合に限り,否定的推奨であることを明確にするためカテゴリー4が設けられている。また,カテゴリー4は一般診療としての否定的推奨を意味しており,適切な研究計画と倫理指針に従った臨床試験での実施を否定しているわけではない。

4.改訂と公開

 本ガイドラインは,広く利用してもらうため,7月に書籍版が刊行された後,2024年1月に学会ホームページにWEB版が公開される。このWEB版にはMindsのガイドラインライブラリおよび日本癌治療学会ガイドラインに設けたリンク11,12)を通じてアクセスが可能である。旧版同様,海外からも参照できるように英語の解説版が順次International Journal of Hematology誌に掲載予定である。
 これまで大改訂が5年おきに行われてきたが,今後はこれを3年程度に短縮する方針である。この間に重要なエビデンスが明らかになった場合は小改訂が行われる方針である。一方で,新薬が次々に登場しているが,こうした逐次情報は本ガイドラインのなかで改訂の形をとらず,日本血液学会のWEBサイトで共有される方針である。第3版までは対象を医療提供者に限るが,今後は医療利用者の視点に立ったガイドラインの作成も予定されている。本ガイドラインの利用普及により,診療内容の均てん化とそれによる患者予後の改善が望まれる。さらに,その検証のため遵守状況のモニタリングも必要である。

5.資金と利益相反
 本ガイドラインの作成のための資金は日本血液学会の支援により得られた。本ガイドラインの内容は特定の営利・非営利団体,医薬品,医療機器企業などとの利害関係はない。ガイドライン委員および評価委員は利益相反の状況を書籍およびWEB上で開示されている。

日本血液学会ガイドライン担当理事
千葉 滋

参考文献

1)Minds診療ガイドライン作成マニュアル編集委員会編集.Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0. 公益法人日本医療機能評価機構発行.
2)EBM普及推進事業(Minds).Mindsからの提言 診療ガイドライン作成における法的側面への配慮について.https://minds.jcqhc.or.jp/s/guidance_proposal1(2023.4.17 アクセス)
3)Djulbegovic B, Guyatt G. Progress in evidence-based medicine: a quarter century on. Lancet 390: 415-23, 2017.
4)がん情報サービス 標準治療と診療ガイドライン
https://ganjoho.jp/public/knowledge/guideline/index.html(2023.4.17 アクセス)
5)Swerdlow SH, et al. (ed). WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues Revised 4th Edition. IARC. 2017
6)Arber DA, et al. International consensus classification of myeloid neoplasms and acute leukemias: integrating morphologic, clinical, and genomic data. Blood 140: 1200-28, 2022.
7)Campo E, et al. The international consensus classification of mature lymphoid neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee. Blood 140: 1229-53, 2022.
8)Koury JD, et al. The 5th edition of the World Health Organization classification of haematolymphoid tumours: myeloid and histiocytic/dendritic neoplasms. Leukemia 36: 1703-19, 2022.
9)Alaggio R, et al. The 5th edition of the World Health Organization classification of haematolymphoid tumours : lymphoid neoplasms. Leukemia 36: 1720-48, 2022.
10)Dohner H, et al. Diagnosis and management of AML in adults: 2022 recommendations from an international expert panel on behalf of the ELN. Blood 140: 1345-77, 2022.
11)Minds ガイドラインライブラリhttps://minds.jcqhc.or.jp/
12)日本癌治療学会 がん診療ガイドラインhttp://www.jsco-cpg.jp/

目次

白血病

No テクニカルクエスチョン グレード
1.急性骨髄性白血病(AML)
総論
アルゴリズム
CQ1 AMLの治療選択と予後予測のために遺伝子検査は有用か 2A
CQ2 AMLの予後予測,治療方針決定にMRDの評価は有用か 2A
CQ3 若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか 1
CQ4 1回の寛解導入療法で完全寛解が得られない初発AMLに対してどのような治療が勧められるか 2B,3
CQ5 若年者(65歳未満)初発CBF-AMLに対する寛解後療法としてどのような治療が勧められるか 2A
CQ6 CBF-AML以外の若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解後療法としてはどのような治療が勧められるか 2B,3
CQ7 強力化学療法が可能な高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ8 強力化学療法が適応とならない高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか 1
CQ9 FLT3変異陽性AMLに対してどのような治療が勧められるか。また,リューコストラットCDx FLT3変異検査を行う場合にどのような注意点があるか 2A
CQ10 第一寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植の適応基準は何か 1
CQ11 再発・難治性AMLに対する救援療法としてどのような治療が勧められるか 2A
CQ12 非寛解期AMLに対する同種造血幹細胞移植の適応基準は何か 3
CQ13 治療関連・二次性AMLに対してどのような治療が勧められるか 2A,2B
CQ14 地固め療法後または移植後のAMLに対する維持療法は勧められるか 2B
CQ15 治療後の好中球減少期のAMLに対してG-CSFの使用は勧められるか 2B,2A
2.急性前骨髄球性白血病(APL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発APLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか 1,1
CQ2 初発APLの寛解導入療法におけるDIC 対策として何が勧められるか 1,2A,2B
CQ3 APL分化症候群に対してどのような治療が勧められるか 2A,2A
CQ4 初発APLの全トランス型レチノイン酸+化学療法による寛解導入後の寛解後療法としてどのような治療が勧められるか 1
CQ5 初発APLの分子学的寛解例に対する維持療法としてどのような治療が勧められるか 2B
CQ6 再発APLの至適な再寛解導入療法は何か 1,2B
CQ7 APL第二寛解例の寛解後治療として何が勧められるか 2A,2A
CQ8 高齢者APLの至適な治療方法は何か 2A,2A
3.急性リンパ芽球性白血病/リンパ芽球性リンパ腫(ALL/LBL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発Ph陽性ALLに対するTKIは何が勧められるか 2A
CQ2 高齢者(65歳以上)Ph陽性ALLに対する初期治療はどのような治療が勧められるか 2A,2A
CQ3 成人ALLの治療においてどのような中枢神経系再発予防が勧められるか 2A,2B
CQ4 寛解期成人ALLにおけるMRDは,どのような評価方法,評価時期,閾値の判定が勧められるか 1,2A
CQ5 第一寛解期ALLには同種造血幹細胞移植が勧められるか(Ph陰性,Ph陽性を含む) 2A
CQ6 第一寛解期ALLの同種造血幹細胞移植には骨髄破壊的前処置と減弱前処置のどちらが勧められるか 2B
CQ7 Ph陽性ALLに対する移植後TKIの維持療法は勧められるか 2A
CQ8 第一寛解期ALLに対して造血幹細胞移植を行わない場合,維持療法は勧められるか 1,2A
CQ9 再発ALLに対する再寛解導入療法の選択肢としてどのような治療が勧められるか,CAR-T細胞療法はどのようなときに考慮すべきか 2B,1,2A,2B,2A
CQ10 初発Ph陰性ALLに対してT細胞性ALLとB細胞性ALLは同様の治療が勧められるか 2B
CQ11 成人(40~64歳)Ph陰性ALLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ12 骨髄浸潤のないLBLにはどのような治療が勧められるか 2B,2B
CQ13 高齢者(65歳以上)Ph陰性ALLにはどのような治療が勧められるか 2B
4.慢性骨髄性白血病/骨髄増殖性腫瘍(CML/MPN)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発CML-CPに対する治療として何が勧められるか 1,2A
CQ2 TKI治療開始後の効果判定のモニタリングはどのような方法が勧められるか 1
CQ3 ELNの効果判定規準によりWarningやFailureとされた症例に対する二次治療,三次治療以降は何が勧められるか 2A
CQ4 TKIの注意すべき晩期副作用のモニタリングとして何が勧められるか 2B
CQ5 同種造血幹細胞移植はCMLの治療中どのようなときに考慮すべきか 2A
CQ6 DMRを達成しMRDが検出されなければTKI中止は勧められるか 2A
CQ7 CMLに対するTKI治療中にTKIの減量は勧められるか 1,2A,2B
CQ8 CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか 2B
CQ9 すべてのPV/ET/MFに対してアスピリンの投与は勧められるか 1,2A,2B
CQ10 低リスクPV/ETに対して細胞減少療法は勧められるか 3,4
CQ11 PVの治療目標としてHt値45%を勧められるか 1
CQ12 ETの治療目標として血小板数40万/μLを勧められるか 2B
CQ13 高リスクPVに対する細胞減少療法としてどのような治療が勧められるか 2A,1
CQ14 高リスクETに対する細胞減少療法としてどのような治療が勧められるか 1
CQ15 妊娠合併ET/PVに対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ16 骨髄線維症(PMF,post PV/post ET-MF)に対してどのようなリスク分類が勧められるか 2A,2B
CQ17 骨髄線維症(PMF,post PV/post ET-MF)に対してルキソリチニブの投与は勧められるか(1)低リスクMF症例(2)高リスクMF症例(3)同種造血細胞移植適応症例における移植前 2A,1,2B
CQ18 骨髄線維症(PMF,post PV/post ET-MF)に対して同種造血細胞移植は勧められるか(適切な移植ソースの選択や移植前治療を含む) 2B
CQ19 骨髄線維症(PMF,post PV/post ET-MF)から進展した白血病に対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ20 pre-PMFに対してどのような治療が勧められるか 3,3
5.慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)
総論
アルゴリズム
CQ1 早期CLLに対して治療介入は勧められるか 1
CQ2 CLL初回治療としてBTK阻害薬療法は勧められるか 1
CQ3 CLL初回治療として免疫化学療法は勧められるか 1,2B
CQ4 イブルチニブ初回治療に治療抵抗性もしくは再発CLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか 1
CQ5 イブルチニブ初回治療に治療不耐容のCLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか 1
CQ6 17p欠失もしくはTP53変異を有する高リスクCLLに対してどのような治療が勧められるか 1
CQ7 自己免疫性溶血性貧血,自己免疫性血小板減少症を合併したCLLに対してステロイド治療は勧められるか 2A
CQ8 組織学的形質転換をきたしたCLL(Richter症候群)に対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ9 再発・難治性CLLに対して造血幹細胞移植は勧められるか 2B
6.骨髄異形成症候群(MDS)
総論
アルゴリズム
CQ1 MDSの予後予測法,リスク分類として勧められるのは何か 2A
CQ2 輸血による鉄過剰症に対する鉄キレート療法の適応基準は何か 2B,2B
CQ3 低リスクMDSに対して免疫抑制療法は勧められるか 2B
CQ4 低リスクMDSの血球減少に対してサイトカイン療法は勧められるか 2A,2B,2B,1,2B
CQ5 低リスクMDSの貧血に対して蛋白同化ステロイド,ビタミンD,ビタミンKは勧められるか 2B
CQ6 低リスクMDSに対してレナリドミドは勧められるか 1,2B
CQ7 低リスクMDSにアザシチジンは勧められるか 2B
CQ8 MDSに対する同種造血幹細胞移植の適応基準は何か,また適切な実施時期はいつか 2A,2A
CQ9 MDSに対して減弱した前処置による同種移植は勧められるか 2A
CQ10 高リスクMDSに対してアザシチジンは勧められるか 1,2A,2B
CQ11 高リスクMDSに対してレナリドミドは勧められるか 2B,2A
CQ12 高リスクMDSに対して化学療法は勧められるか 2A,2B,2B,2A

リンパ腫

悪性リンパ腫 総論
1.濾胞性リンパ腫(FL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発進行期高腫瘍量のFLに対してどのような治療が勧められるか 1
CQ2 初発進行期低腫瘍量のFLに対してどのような治療が勧められるか 1,2A
CQ3 初発限局期FLに対してどのような治療が勧められるか 2A,2B
CQ4 初発進行期FLに対して抗CD20抗体維持療法は勧められるか 1
CQ5 再発FLに対してどのような治療が勧められるか 2
CQ6 再発・難治性FLに対して自家移植併用大量化学療法,同種造血幹細胞移植は勧められるか 2A,3
CQ7 組織学的形質転換をきたしたFLに対してどのような治療が勧められるか 2B,2B,2A
2.辺縁帯リンパ腫[節外性辺縁帯リンパ腫(粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫),節性辺縁帯リンパ腫および脾辺縁帯リンパ腫を含む](MZL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発 H. pylori 陽性限局期胃EMZLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ2 初発 H. pylori 陰性限局期胃EMZLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ3 初発 H. pylori 陽性限局期胃EMZLに対し H. pylori 除菌後にリンパ腫の残存がみられる場合にはどのような治療が勧められるか 2A
CQ4 胃以外の初発限局期EMZLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ5 初発限局期NMZLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ6 初発進行期EMZLに無治療経過観察は推奨されるか 2A
CQ7 初発進行期NMZLに無治療経過観察は推奨されるか 2A
CQ8 組織学的形質転換をきたしたMZLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ9 症状のある未治療HCV陽性SMZLにHCV除去療法は推奨されるか 2A
CQ10 症状のある未治療HCV陰性SMZLにはどのような治療が勧められるか 2B
3.リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(LPL/WM)
総論
アルゴリズム
CQ1 未治療WMに対してどの時点での治療開始が勧められるか 2A
CQ2 症候性WMに対して血漿交換は勧められるか 1
CQ3 未治療症候性WMに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ4 WMの再燃・再発時の救援療法にはどのような治療が勧められるか 2A
4.マントル細胞リンパ腫(MCL)
総論
アルゴリズム
CQ1 限局期MCLの初回治療としてどのような治療が勧められるか 2B
CQ2 初発MCLに対する初回治療として無治療経過観察は勧められるか 2B
CQ3 若年初発進行期MCLにどのような治療が勧められるか 1
CQ4 高齢者(66歳以上),あるいは若年者(65歳以下)でも強力化学療法の適応とならない初発進行期MCLに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ5 初発進行期MCLに対してリツキシマブ維持療法を実施すべきか 1
CQ6 再発・難治性MCLに対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ7 再発・難治性MCLに対して同種移植の適応はあるか 2B
5.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL,NOS)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発限局期DLBCLに対してどのような治療が勧められるか 1,2A,1
CQ2 初発進行期DLBCLに対してどのような治療が勧められるか 1
CQ3 DLBCLに対する中枢神経系再発予防としてどのような治療が勧められるか 2A,2B
CQ4 心機能の低下が予想される初発DLBCLに対して適切な化学療法は何か 2A
CQ5 高齢者DLBCLに対する標準治療は何か 1,2A
CQ6 再発・難治性DLBCLに対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は勧められるか 1,1
CQ7 再発・難治性DLBCLに対して同種造血幹細胞移植は勧められるか 2B
CQ8 節外性リンパ腫など治療上特別な配慮が必要なDLBCLの病態・病型は何か 2B
CQ9 再発・難治性DLBCLに対してCAR-T細胞療法は勧められるか 1
6.バーキットリンパ腫/高悪性度B細胞リンパ腫(BL/HGBL)
総論
アルゴリズム
CQ1 未治療BLの初回治療としてどのような治療が勧められるか 2A
CQ2 BLの腫瘍崩壊症候群のリスクはどのように評価し,どのような予防が勧められるか 2A
CQ3 BLの中枢神経系浸潤に対してどのような予防や治療が勧められるか 2A
CQ4 BLの治療後のフォローアップはどのような方法で行うことが勧められるか 2B
CQ5 治療抵抗性・再発性BLに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ6 HGBLに対してどのような治療が勧められるか 2A
7.末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)
総論
アルゴリズム
CQ1 未治療ALK陽性ALCLにはどのような治療が勧められるか 1
CQ2 未治療でCD30陽性のPTCL-NOS,AITL,ALK陰性ALCLにはどのような治療が勧められるか 1
CQ3 未治療でCD30陰性のPTCL-NOS,AITLにはどのような治療が勧められるか 2A
CQ4 初発進行期PTCL-NOS,AITL,ALK陰性ALCLの化学療法後CR患者において地固め療法としての自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は勧められるか 2A
8.節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(ENKL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発鼻腔周辺限局期(頸部リンパ節浸潤までのⅡE期)ENKLに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ2 鼻腔周辺以外の限局期,初発進行期および初回再発/治療抵抗性ENKLに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ3 初発進行期ENKLおよび初回再発/治療抵抗性ENKLに対する救援療法による寛解導入後,地固め療法として造血幹細胞移植は勧められるか 2B
9.成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発若年者(70歳未満)アグレッシブATLに勧められる治療は何か 1
CQ2 初発高齢者(70歳以上)アグレッシブATLに対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ3 アグレッシブATLに対して同種造血幹細胞移植は勧められるか 2A
CQ4 アグレッシブATLに対する同種造血幹細胞移植において臍帯血移植やHLA半合致移植は有用か 2B
CQ5 再発・難治性ATLに勧められる治療は何か 2B
CQ6 インドレントATLに対する早期治療介入は有用か 2B
10.ホジキンリンパ腫(HL)
総論
アルゴリズム
CQ1 初発限局期CHLに対する標準治療として化学療法と放射線療法の併用(CMT)は勧められるか 1
CQ2 Bulky病変を認めない初発限局期CHLに対してABVD療法6コースは勧められるか 2B
CQ3 初発限局期CHL予後良好群に対してABVD療法2コースとISRTの併用(CMT)は勧められるか 2A
CQ4 初発限局期CHL予後不良群に対してどのような治療が勧められるか 2A,2B
CQ5 NLPHLに対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ6 初発進行期CHLに対してどのような治療が勧められるか 1
CQ7 高齢者(60歳以上)初発進行期CHLに対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ8 初発CHLに対して初回治療中間でのFDG-PET検査(中間PET)による層別化治療は勧められるか 2A
CQ9 初発進行期CHLに対して地固め療法としてISRTは勧められるか 4
CQ10 再発・難治性CHLに対してどのような治療が勧められるか 2B
CQ11 若年者(60歳未満)再発CHLに対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は勧められるか 2A
CQ12 若年者(60歳未満)初回再発後の再発CHLに対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法前の救援化学療法としてどのような治療が勧められるか 2B
CQ13 自家造血幹細胞移植併用大量化学療法後に再発したCHLに対して同種造血幹細胞移植は勧められるか 2B

骨髄腫

1.多発性骨髄腫(MM)
総論
アルゴリズム
(1)未治療で移植適応のある多発性骨髄腫
CQ1 移植適応の未治療多発性骨髄腫に対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか 1
CQ2 移植適応の多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植は再発時よりも寛解導入後早期の実施が勧められるか 1
CQ3 移植適応の多発性骨髄腫に対するタンデム自家移植はシングル自家移植よりも生存期間の延長に有用か 3(2B)
CQ4 移植適応の多発性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植後の維持療法は勧められるか。また,いつまで継続するか 1
CQ5 移植適応の高リスクの多発性骨髄腫や原発性形質細胞白血病に対してどのような治療が勧められるか 3
(2)未治療で移植適応のない多発性骨髄腫
CQ1 移植適応のない未治療多発性骨髄腫に対してどのような治療が勧められるか 1
CQ2 移植適応のない未治療高齢者(frail)多発性骨髄腫に対する薬剤の減量は勧められるか 2A
CQ3 移植適応のない多発性骨髄腫に対する継続療法や維持療法は勧められるか。また,いつまで継続するか 1,2A
(3)未治療のMGUS・くすぶり型骨髄腫
CQ1 MGUSやくすぶり型骨髄腫(SMM)に対してどのようにモニタリングを行うか 2A
CQ2 くすぶり型骨髄腫の進行予測に有用な予後因子は何か 2A
CQ3 高リスクのくすぶり型骨髄腫に対する治療介入は推奨されるか 4
CQ4 MGUSやくすぶり型骨髄腫に対するビスホスホネート製剤やデノスマブの投与は推奨されるか 4
(4)微小残存病変の評価
CQ1 多発性骨髄腫に対する微小残存病変(MRD)の評価にはどのような方法が勧められるか(画像検査も含む) 1,2A
CQ2 多発性骨髄腫に対するMRDの評価は生存期間のサロゲートマーカーとして有用か 1
CQ3 多発性骨髄腫に対するMRDの評価に基づいた治療の変更は勧められるか 該当なし
(5)再発・難治性骨髄腫
CQ1 再発・難治性骨髄腫に対する自家造血幹細胞移植や同種造血幹細胞移植は生存期間を延長させるか 2B,3
CQ2 初回再発時の骨髄腫に対してどのような治療が勧められるか 1,2B
CQ3 レナリドミドに抵抗性の再発性骨髄腫に対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ4 ボルテゾミブに抵抗性の再発性骨髄腫に対してどのような治療が勧められるか 2A
CQ5 レナリドミドとボルテゾミブの両者に抵抗性(double-refractory)の再発性骨髄腫に対してどのような治療が勧められるか 2A,2B,2B
CQ6 抗CD38抗体に抵抗性の再発・難治性多発性骨髄腫に対してどのような治療が勧められるか 2A,2B,2A
CQ7 再発・難治性多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法の適応基準は何か,どのような効果が期待されるか 2A
(6)多発性骨髄腫における溶骨病変・合併症の治療
CQ1 骨病変を有する多発性骨髄腫の骨関連事象の予防にはどのような治療が勧められるか 1
CQ2 多発性骨髄腫に対する骨吸収抑制薬による顎骨壊死の予防にはどのような処置が勧められるか 2A
CQ3 多発性骨髄腫に対する骨吸収抑制薬の投与は生存期間の延長に有用か 2A
CQ4 プロテアソーム阻害薬を投与中の多発性骨髄腫における帯状疱疹の予防にはどのような治療が勧められるか 2A
CQ5 免疫調節薬を投与中の多発性骨髄腫における深部静脈血栓症の予防にはどのような治療が勧められるか 2A
2.多発性骨髄腫の類縁疾患
(1)孤立性形質細胞腫
総論
(2)ALアミロイドーシス
総論
アルゴリズム
CQ1 ALアミロイドーシスに対する自家造血幹細胞移植の適応基準は何か 2B
CQ2 移植適応のALアミロイドーシスに対してどのような移植前治療が勧められるか 2B
CQ3 移植適応のないALアミロイドーシスに対してどのような治療が勧められるか 1
(3)POEMS症候群
総論
CQ1 POEMS症候群に対する自家造血幹細胞移植の適応基準は何か 該当なし
CQ2 移植適応のPOEMS症候群に対する寛解導入療法は何が推奨されるか 2B
CQ3 移植適応のないPOEMS症候群に対する治療は何が推奨されるか 2B

効果判定規準一覧

急性骨髄性白血病
(AML)
完全寛解 complete remission CR
血液学的完全寛解 hematological CR CRh
正常な血球回復が不完全な寛解 CR with imcomplete blood recovery CRi
形態学的完全寛解 morphological CR CR
細胞遺伝学的寛解 cytogenetic CR CRc
分子学的寛解 molecular CR CRm
部分寛解 partial remission PR
再発 relapse  
髄外再発 extramedullary relapse  
治療不成功 failure  
寛解期間 remission duration  
急性リンパ性白血病
(ALL)
完全寛解 complete remission CR
部分寛解 partial remission PR
分子遺伝学的完全奏効 complete molecular response CMR
無白血病生存 leukemia free survival LFS
再発 relapse  
治療不成功 failure  
進行 progression PD
慢性骨髄性白血病
(CML)
血液学的完全奏効 complete hematologic response CHR
細胞遺伝学的完全奏効 complete cytogenetic response CCyR
細胞遺伝学的部分奏効 partial cytogenetic response PCyR
CCyR+PCyR major cytogenetic response MCyR
細胞遺伝学的小奏効 minor cytogenetic response Minor CyR
細胞遺伝学的微小奏効 minimum cytogenetic response Mini CyR
分子遺伝学的大奏効 major molecular response MMR
分子遺伝学的に深い奏効 deep molecular response DMR
至適奏効 optimal response  
要注意 warning  
不成功 failure  
慢性リンパ性白血病(CLL) 完全奏効 complete response CR
部分奏効 partial response PR
安定 stable disease SD
進行 progression PD
骨髄異形成症候群
(MDS)
完全寛解 complete remission CR
部分寛解 partial remission PR
骨髄 CR marrow CR mCR
血液学的改善効果 hematologic improvement HI
病勢の安定 stable disease SD
治療不成功 failure  
CR または PR 後の再発 relapse after CR or PR  
細胞遺伝学的奏効 cytogenetic response  
完全細胞遺伝学的奏効 complete cytogenetic response  
部分細胞遺伝学的奏効 partial cytogenetic response  
進行 disease progression/progressive disease  
生存 survival  
再燃 relapse  
原病死 cause-specific death  
悪性リンパ腫 全奏効 overall response OR
完全奏効 complete response CR
不確定完全奏効 complete response/unconfirmed CRu
代謝学的完全奏効 complete metabolic response CMR
部分奏効 partial response PR
安定 stable disease SD
進行 progressive disease PD
再発 relapse disease  
多発性骨髄腫(MM) 全奏効 overall response OR
厳格な完全奏効 stringent CR sCR
完全奏効 complete response CR
完全奏効に近い奏効 near complete response nCR
最良部分奏効 very good partial response VGPR
部分奏効 partial response PR
最小奏効 minimal/minor response MR
安定 stable disease SD
不変 no change NC
プラトー plateau phase  
再発 relapse  
臨床的再発 clinical relapse  
生化学的再発 biochemical relapse  
進行 progressive disease PD
増悪 progression  
奏効期間 duration of response  
本書を通じて 全生存期間/割合 overall survival OS
無病生存期間/割合 disease-free survival DFS
無再発生存期間/割合 relapse-free survival RFS
無イベント生存期間/割合 event-free survival EFS
無増悪生存期間/割合 progression-free survival PFS
治療成功生存期間/割合 failure-free survival FFS
50%生存期間 median survival time MST
累積再発割合 cumulative incidence of relapse CIR
無増悪期間 time to progression TTP
治療成功期間 time to treatment failure TTTF
次治療開始までの期間 time to next treatment TTNT
治療成功割合 freedom from treatment failure FFTF
治療関連死亡 therapy-related mortality TRM
非再発死亡率 non relapse mortality NRM
微小残存病変/測定可能残存病変 minimal/measurable residual disease MRD

median survival time(MST)は,カプラン・マイヤー曲線で生存率が初めて 50%になるまでの期間を示し,生存期間の中央値とは異なる指標である。本邦では「生存期間中央値」と訳されることがあるが,不正確な用語であることからこれを用いず「50%生存期間」とした。

薬剤名一覧

belantamab mafodotin(国内未承認) BLMF
carmustine(国内未承認) BCNU
chlorambucil(国内未承認) CB
clodronate(国内未承認) CLOD
decitabine(国内未承認) DAC
lomustine(国内未承認) CCNU
luspatercept(国内未承認)  
mechlorethamine(国内未承認) HN2
midostaurin(国内未承認) MIDO
selinexor(国内未承認) SEL
teclistamab(国内未承認) TEC
アカラブルチニブ  
アキシカブタゲン シロルユーセル Axi-Cel
アクラルビシン ACR
アザシチジン AZA
アシクロビル ACV
アシミニブ ASC
L-アスパラギナーゼ L-Asp
アナグレリド ANA
亜ヒ酸 ATO
アピキサバン APX
アレムツズマブ ALZ
イキサゾミブ IXA
イサツキシマブ ISA
イダルビシン IDR
イデカブタゲン ビクルユーセル Ide-Cel
イノツズマブ オゾガマイシン InO
イホスファミド IFM
イブリツモマブ チウキセタン  
イブルチニブ IBT
イマチニブ IMA
イリノテカン CPT11
インターフェロンα IFN α
エトポシド ETP
エノシタビン BHAC
エピルビシン EPI
エリスロポエチン EPO
エルトロンボパグ EPAG
エロツズマブ ELO
オキサリプラチン L-OHP
オビヌツズマブ  
オファツムマブ Ofab
全トランス型レチノイン酸 ATRA
カルフィルゾミブ CFZ
カルボプラチン CBDCA
キザルチニブ QUIZ
ギルテリチニブ GIL
ゲムシタビン Gem
ゲムツヅマブ オゾガマイシン GO
サリドマイド THAL
シクロスポリン CsA
シクロホスファミド CPA
シスプラチン CDDP
シタラビン AraC
シルタカブタゲン オートルユーセル Cilta-Cel
ソブゾキサン MST-16
ゾレドロン酸 ZOL
ダウノルビシン DNR
ダカルバジン DTIC
ダサチニブ DAS
タゼメトスタット  
ダナゾール DNZ
ダラツムマブ DARA
ダルベポエチン dEPO
チオテパ TT
チサゲンレクルユーセル Tisa-Cel
チラブルチニブ  
ツシジノスタット  
デキサメタゾン DEX
デノスマブ Dmab
デフェラシロクス DFX
ドキソルビシン DXR
ニボルマブ NIVO
ニロチニブ NIL
ネララビン AraG
パノビノスタット PAN
パミドロネート PAM
バレメトスタット  
ヒドロキシウレア HU
非ペグ化リポソーマル・ドキソルビシン NPLD
ピラルビシン THP-DXR
ビンクリスチン VCR
ビンデシン VDS
ビンブラスチン VBL
ブスルファン BU
ブリナツモマブ BLINA
フルダラビン FLU
ブレオマイシン BLM
プレドニゾロン PSL
プレリキサホル  
ブレンツキシマブ ベドチン BV
プロカルバジン PCZ
ペグアスパルガーゼ  
ペグ化リポソーマル・ドキソルビシン PLD
ベネトクラクス VEN
ペムブロリズマブ PEM
ベンダムスチン BEN
ペントスタチン DCF
ボスチニブ BOS
ポナチニブ PON
ポマリドミド POM
ポラツズマブ ベドチン Pola
ボルテゾミブ BOR
ミトキサントロン MIT
メチルプレドニゾロン mPSL
メトトレキサート MTX
メルカプトプリン 6-MP
メルファラン MEL
モガムリズマブ MOGA
ラスブリカーゼ  
ラニムスチン MCNU
リソカブタゲン マラルユーセル Liso-Cel
リツキシマブ R
リポソーマル・ドキソルビ シン Lipo-DXR
ルキソリチニブ RUX
レナリドミド LEN
ロミプロスチム ROMI

 

治療一覧

ABV療法 DXR,BLM,VBL
ABVD療法 DXR,BLM,VBL,DTIC
ABVd療法 DXR,BLM,VBL,低用量DTIC
AIDA療法 ATRA,IDR
AspaMetDex療法 L-Asp,MTX,DEX
AV療法 DXR,VBL
AVD療法 DXR,VBL,DTIC
BAD療法 BOR,DXR,DEX
BCD療法 BOR,CPA,DEX
BCd療法 BOR,CPA,低用量DEX
BD療法 BOR,DEX
Bd療法 BOR,低用量DEX
BDT-PACE療法 BOR,DEX,THAL,CDDP,DXR,CPA,ETP
BEACOPP療法 BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL
増量BEACOPP療法 BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL
BEACOPP-14療法 BLM,ETP,DXR,CPA,VCR,PCZ,PSL
BEAM療法 BCNU(国内未承認),ETP,AraC,MEL
BLD療法 BOR,LEN,DEX
BLd療法 BOR,LEN,低用量DEX
BLd-lite療法 BOR,LEN,低用量DEX
BMP療法 BOR,MEL,PSL
BR療法 BEN,R
BTD療法 BOR,THAL,DEX
BTd療法 BOR,THAL,低用量DEX
BV-CHP療法 BV,CPA,DXR,PSL
BV併用AVD療法 BV,DXR,VBL,DTIC
CAG療法 低用量AraC,ACR,G-CSF
CBD療法 CPA,BOR,DEX
CCRT-VIDL療法 CCRT(RT,CDDP),VIDL(ETP,IFM,DEX,L-Asp)
CCRT-VIPD療法 CCRT(RT,CDDP),VIPD(ETP,IFM,CDDP,DEX)
CHASE療法 CPA,大量AraC,DEX,ETP
CHASER療法 CPA,大量AraC,DEX,ETP,R
CHOEP療法 CPA,DXR,VCR,ETP,PSL
CHOP療法 CPA,DXR,VCR,PSL
CHOP-14療法 CPA,DXR,VCR,PSL
CNOP療法 CPA,MIT,VCR,PSL
CODOX-M/IVAC療法 CODOX-M(CPA,VCR,DXR,大量MTX),IVAC(IFM,ETP,大量AraC)
COP療法 CPA,VCR,PSL
COPP/ABV療法 CPA,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL
COPP/ABVD療法 CPA,VCR,PCZ,PSL/DXR,BLM,VBL,DTIC
CPd療法 CPA,POM,低用量DEX
CTD療法 CPA,THAL,DEX
CVAD療法 CPA,VCR,DXR,DEX
CVP療法 CPA,VCR,PSL
DA-EPOCH療法 ETP,PSL,VCR,CPA,DXR
DA-EPOCH-R療法 ETP,PSL,VCR,CPA,DXR,R
D-BCD療法 DARA,BOR,CPA,DEX
D-BLD療法 DARA,BOR,LEN,DEX
DBd療法 DARA,BOR,低用量DEX
DCEP療法 DEX,CPA,ETP,CDDP
DeVIC療法 DEX,ETP,IFM,CBDCA
Dexa-BEAM療法 DEX,BCNU(国内未承認),ETP,AraC,MEL
DHAP療法 DEX,大量AraC,CDDP
DKd療法 DARA,CFZ,低用量DEX
DLd療法 DARA,LEN,低用量DEX
D-MPB療法 DARA,MEL,PSL,BOR
DPd療法 DARA,POM,低用量DEX
DRC療法 DEX,R,CPA
EBVP療法 EPI,BLM,VBL,PSL
ELd療法 ELO,LEN,低用量DEX
EPd療法 ELO,POM,低用量DEX
EPOCH療法 ETP,PSL,VCR,CPA,DXR
EPOCH-R療法 ETP,PSL,VCR,CPA,DXR,R
ESHAP療法 ETP,mPSL,大量AraC,CDDP
FCR療法 FLU,CPA,R
FLAG療法 AraC,FLU,G-CSF
FLAGM療法 AraC,FLU,G-CSF,MIT
FR療法 R,FLU
fractionated ICE療法 IFM,CBDCA,ETP
GD療法 Gem,DEX
GDP療法 Gem,DEX,CDDP
GMALL療法 IDR,DEX,VCR,CPA,AraC
GRAALL療法 DXR,VCR,DEX,AraC,CPA
hyper-CVAD療法 CPA,VCR,DXR,DEX
hyper-CVAD/MA療法 CPA,VCR,DXR,DEX,大量MTX,大量AraC
ICE療法 IFM,CBDCA,ETP
ILd療法 IXA,LEN,低用量DEX
ISA-d療法 ISA,低用量DEX
ISA-Kd療法 ISA,CFZ,低用量DEX
ISA-Pd療法 ISA,POM,低用量DEX
KCd療法 CFZ,CPA,低用量DEX
Kd療法 CFZ,低用量DEX
KLd療法 CFZ,LEN,低用量DEX
LCD療法 LEN,CPA,DEX
LD療法 LEN,DEX
Ld療法 LEN,低用量DEX
Ld-L療法 Ld導入療法+LEN維持療法
MD療法 MEL,DEX
MEC療法 MIT,ETP,AraC
MINE療法 MIT,IFM,メスナ,ETP
modified CODOX-M/IVAC療法 CODOX-M(CPA,VCR,DXR,大量MTX),IVAC(IFM,ETP,大量AraC)
modified DFCI91-01療法 DEX,DXR,VCR,MTX,AraC,L-Asp,6-MP(AraC,MTX,hydrocortisone髄腔内投与)
modified EPOCH療法 ETP,DXR,CPA,VCR,PSL
MOPP療法 HN2,VCR,PCZ,PSL
MOPP/ABV療法 MOPP(HN2,VCR,PCZ,PSL),ABV(DXR,BLM,VBL)
MOPP/ABVD療法 MOPP(HN2,VCR,PCZ,PSL),ABVD(DXR,BLM,VBL,DTIC)
MP療法 MEL,PSL
MPB療法 MEL,PSL,BOR
MPL療法 MEL,PSL,LEN
MPL-L療法 MPL導入療法+LEN維持療法
MPT療法 MEL,PSL,THAL
PAN-Bd療法 PAN,BOR,低用量DEX
PBd療法 POM,BOR,低用量DEX
Pd療法 POM,低用量DEX
PETHEMA-ALLOLD07療法 VCR,DEX,IDR,CPA,AraC,MTX,L-Asp
POMP療法 PSL,VCR,MTX,6MP
PVAG療法 PSL,VBL,DXR,GEM
RB療法 R,BEN
R-BAC療法 R,BEN,AraC
RB/RC療法 RB(R,BEN),RC(R,AraC)
R-CEOP療法 R,CPA,ETP,VCR,PSL
R-CEOP療法 R,CPA,EPI,VCR,PSL
R-CHOP療法 R,CPA,DXR,VCR,PSL
R-CHOP-14療法 R,CPA,DXR,VCR,PSL
R-CHP療法 R,CPA,DXR,PSL
R-CMyOP療法 R,CPA,PLD,VCR,PSL
R-COMP療法 R,CPA,NPLD,VCR,PSL
R-CVP療法 R,CPA,VCR,PSL
R-DHAP療法 R,DEX,大量AraC,CDDP
R-FC療法 R,FLU,CPA
R-FM療法 R,FLU,MIT
R-GCVP療法 R,Gem,CPA,VCR,PSL
R-GemOx療法 R,GEM,L-OHP
R-HD-AraC療法 R,大量AraC
R-hyper-CVAD療法 R,CPA,VCR,DXR,DEX
R-hyper-CVAD/MA療法 R,CPA,VCR,DXR,DEX,大量MTX,大量AraC
R-ICE療法 R,IFM,CBDCA,ETP
R-maxi-CHOP療法 R,CPA,DXR,VCR,PSL
R-MPV療法 R,MTX,PCZ,VCR
R-THP-COP療法 R,CPA,THP-DXR,VCR,PSL
RT-2/3DeVIC療法 DEX,ETP,IFM,CBDCA
R-VICI療法 R,VCR,IFM,CBDCA,IDR,DEX
SMILE療法 DEX,MTX,IFM,L-Asp,ETP
Stanford V療法 DXR,VBL,HN2,ETP,VCR,BLM,PSL
TD療法 THAL,DEX
Td療法 THAL,低用量DEX
THP-COP療法 CPA,THP-DXR,VCR,PSL
VAD療法 VCR,DXR,DEX
VCAP-AMP-VECP(modified LSG15)療法 VCAP(VCR,CPA,DXR,PSL),AMP(DXR,MCNU,PSL),VECP(VDS,ETP,CBDCA,PSL)
VIDL療法 ETP,IFM,DEX,L-Asp
VR-CAP療法 BOR,R,CPA,DXR,PSL

 

利益相反の開示

第3版 あとがき

 近年の遺伝子異常や分子病態の解明により,造血器腫瘍は悪性腫瘍の中でも最も診断と治療の進歩を遂げている分野である。WHO分類やInternational Consensus Classification(ICC)分類に基づき,疾患単位の細分類化が進行すると同時に,新規機序を有する薬剤の登場により治療法も多様化し,個別化医療,プレシジョン・メディシンの時代を迎えつつある。このような大きな進展の中で,最善の医療を提供したいという現場のニーズに応えるため,日本血液学会は2013年に「造血器腫瘍診療ガイドライン」の初版を発行し,以来,2018年に改訂版,2020年に補訂版と版を重ねてきた。今回,まさに待ち望まれていた第3版が刊行され,最新の指針として診療にお役立て頂ければ,委員一同の大きな喜びである。
 本ガイドライン第3版はこれまでの基本方針通り,主要疾患ごとの総論,治療アルゴリズム,クリニカルクエスチョン(clinical question:CQ)から構成されている。この中でCQは患者と医療者の意思決定における最も重要な要素であり,診療の上で重要度の高い項目を厳選して取り上げた。今回は新たにシステマティックレビュー(systematic review:SR)委員を任命し,各CQの根拠となる文献の探索と構造化抄録の作成を依頼し,エビデンスレベルを明確にした上で,執筆委員が著述する手順とした。本ガイドライン全体の内容については,評価委員による評価を受けるとともに,広く日本血液学会会員からパブリックコメントを募集し,貴重なご意見を反映させるべく努めた。このように,多くの委員や学会員,事務局の方々のご努力の賜物として第3版が完成した。
 ガイドラインは診療現場のみならず,研修医や専門医の教育のための学習教材として,あるいはCQを解決するための新たな研究課題のシーズとして活用されることが望ましい。本ガイドライン第3版は総論やアルゴリズムにおいて疾患の基本的な事項から最新の内容まで網羅しており,広く医学・医療の分野に貢献するものと確信している。また,医療政策の観点からは,生活の質(quality of life:QOL)や費用対効果も重要な課題であり,ガイドラインの導入による成果が期待される。
 最後に,本ガイドライン第3版の作成にあたり,真のリーダーシップを発揮された日本血液学会理事長の松村到先生,チームの先頭に立って統括された診療ガイドライン担当理事の千葉滋先生,初版より立案や取りまとめに従事された副委員長の南谷泰仁先生,事務局の労をとられた委員の名島悠峰先生に深く感謝の意を表する。

 2023年6月

造血器腫瘍診療ガイドライン委員会委員長 尾崎修治

第2版補訂版 あとがき

 2018年7月に日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン第2版が出版されてから約2年が経とうとしている。造血器腫瘍における治療の進歩には目覚ましいものがあり,第2版用の原稿が揃って出版に至るまでの間にも,多くの重要な新薬が認可されていた。このため,その領域の執筆を担当された専門の先生方からは,補訂版を出す必要があることが第2版の出版直後から指摘されていた。その結果,通常のガイドラインの改訂版としては異例の速さで補訂版が出版されることになった。
 本ガイドラインが出版されるまでには,各項目の執筆者間で膨大なメールのやり取りが行われてきた。そのやり取りをみていると,本ガイドラインの診療に対するインパクトが大きいことを感じている作成委員や評価委員の先生方が,内容に不備があってはいけないという強い責任感を持って執筆に取り組んでおられる様子がひしひしと伝わってくる。日常の診療・研究・教育に多忙な中で,ガイドライン作成のために時間を割くことは並大抵のことではない。作成委員・評価委員の皆さんに感謝申し上げたい。さらに,これらのすべてを取りまとめているガイドライン委員会委員(実質的な委員長)の京都大学腫瘍生物学南谷泰仁先生には,今回も頭が下がる思いである。
 近年では新薬の情報が世の中に溢れているためか,患者さん自身の口からCAR-T細胞やbispecific抗体の話が出て,診ている医師が戸惑うこともある。私のようにどちらかというと良性の血液疾患を専門に診ている者でも,本ガイドラインが傍らにあれば,リンパ腫治療やリンパ性白血病治療における位置づけを患者さんに正確に説明することができる。
 本補訂版が,第一線で血液内科診療に取り組む内科医にとって,これまでにも増して大きな診療の助けになることを祈っている。

 2020年4月

ガイドライン作成委員会委員長 中尾眞二

第2版 あとがき

 造血器悪性腫瘍の治療は文字通り日進月歩である。生きている間にいつか悪性疾患になるとすれば,少しでも後でなったほうがよいのは当然のことだが,造血器腫瘍ほど,遅れて罹患したほうが得をする腫瘍はないのではないだろうか。この5年間だけでも,慢性骨髄性白血病に対する新規チロシンキナーゼの選択肢の拡大,悪性リンパ腫に対する新規抗体療法の上市,免疫チェックポイント阻害剤の適応拡大,多発性骨髄腫に対する様々な新規薬剤の登場など,新しい治療の話題には事欠かない。血液内科学の中でも,専門領域が高度に細分化されつつある現在,すべての領域で最先端の知識を身に着けるのは不可能に近いが,血液内科医が圧倒的に不足している現在,少数の血液専門医があらゆる造血器腫瘍を診療しているのが実情と思われる。このため,すべての血液専門医が診療の現場で標準的な治療が行えるように工夫されたガイドラインの作成が求められてきた。
 本ガイドラインはそのような血液専門医のニーズに応えるため,2013年10月に第1版が出版され,このたび5年ぶりに大幅な改訂が行われた。第2版は,旧版と同様に,各腫瘍の簡潔な総論・治療アルゴリズムの紹介に続いて,現場の医師が疑問に感じるであろうクリニカルクエスチョン(CQ)が適切に選択され,通読するだけで,その腫瘍の最新治療とエビデンスが容易に理解できる構成になっている。このような実践的なガイドラインは,他領域の腫瘍診療ガイドラインではまずないのではないだろうか。新薬の登場に合わせて治療選択に迷うようになった領域については,新しくCQと明快な回答・文献が追加されているため,筆者の様に造血器腫瘍を治療する機会が普段は少ない血液内科医でも,自信を持って化学療法の処方箋が書ける内容になっている。
 日常診療で極めて多忙な血液内科医がこれだけ充実した内容のガイドラインをまとめるのには大変な犠牲を払ったのではないかと想像する。造血器腫瘍診療を均てん化し,悪性腫瘍で苦しむ患者に常に最良の医療が行われるようにしたい,という各執筆者の熱意と,日本血液学会の赤司浩一理事長,松村 到副理事長,三谷絹子副理事長らの強いリーダーシップがなければ,本ガイドライン作成の作業は到底なし得なかったと思われる。皆様のご努力に感謝申し上げたい。ことに,超人的な実務能力を発揮して第2版作成の音頭を取られた京都大学腫瘍生物学 南谷泰仁先生には頭が下がる思いである。

 2018年6月

ガイドライン作成委員会委員長 中尾眞二

初版 あとがき

 成人の血液疾患領域において,個別の疾患レベルでは,これまでも研究班などで作成された優れたガイドラインがいくつもあったが,造血器腫瘍全体を統一された形式で俯瞰したものは事実上存在しなかった。このたび,日本血液学会の編纂により,多岐にわたる造血器腫瘍を包摂して,最新の診療ガイドラインが刊行される運びとなったことは誠に意義深いことである。
 本ガイドラインは2011年5月に,日本血液学会会員から各疾患のエキスパートが一堂に会して,実質的な作成作業が始まった。疾患別作成委員会内に作られたワーキンググループ(WG)の精力的な活動のもと,極めて順調に原稿が寄せられたことが記憶に新しい。いずれも充実した内容で,分量の関係で項目を厳選するなどの調整を行った結果,一層密度の高いものとなった。その後,独立した評価委員会による3回にわたる評価・修正を行い,さらに関連学会や研究班からの意見をいただくとともに日本血液学会会員から広くパップブリックコメントを募集した。その集大成が本ガイドラインである。
 本書は主要疾患ごとに,エッセンスを的確に集約した総論,現時点での治療の考え方をわかりやすく図示したアルゴリズム,選び抜かれたClinical question(CQ)からなっている。CQのパートでは重要な文献に基づいて適切なエビデンスとそのレベルが明確に記載され,現時点での診療の到達点が見事に記されている。全体として現在のガイドラインで汎用される形式に則り,診療上標準となる情報を濃縮したものとなった。読み返してみると,造血器腫瘍領域にこれまでなかった待望の書であることを改めて感じ,血液の診療に携わる医師のみならず,他領域の医師や医療関係者にも広く役立つ内容であると確信する。本書の誕生の場に参加できたことを大変光栄に感じるところである。
 本書に関しては,文献の内容をコンパクトに把握できる構造化抄録も作成され,本文の一部とともにwebで閲覧可能となる。本書が多くの方にさまざまな形で幅広く活用されることが望まれる。一方,最新の情報を維持するためには,適切な方法で内容の追加,アップデートしていく必要があろう。そのような意味で,本書は造血器腫瘍の診療の携わる方に育てていただくものと考える。
 最後に,本ガイドライン作成に不可欠のリーダーシップを発揮された金倉 譲 日本血液学会理事長,実質的な作成作業を取りまとめてくださった大西一功 疾患別作成委員会委員長,的確な評価と修正指示を取りまとめてくださった直江知樹委員長をはじめとする評価委員の方々,各疾患別WG責任者をはじめとする全ての執筆者ならびに作成委員会の各委員の方々,そして事務局として実務の労を執られた南谷泰仁氏(東京大学血液・腫瘍内科)に深甚の感謝の意を表したい。

 2013年9月

ガイドライン作成委員会委員長 黒川峰夫

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